インチキ療法の研究家スティーヴン・パレット氏によると、このような響きのよい言葉には注意が必要だという。
専門用語を並べ立て、最新の治療法だとひけらかすのが、「現代の典型的インチキ療法」だからである。
ウルリッヒ・シュトゥルンツ氏は、新しいテクノロジーよりも数字を重視する。
著書『不老|ビタミンで体調は最高』から若干を引用すると、「カロテノイドの血中濃度が高いとがん発症率が低下することが、一〇〇を超える研究により証明されている」「一九九二年には、アメリカ国立がん研究所のブロック教授が二二二件の研究を紹介、それによると抗酸化物質を多量に摂取するとがん発症率が半減し、今日までにさらに数百件の研究が行われている」などとある。
こういった数字の羅列の陰にある意図は明白だ。
「これだけ大勢の専門家がまちがうはずがない」と、実態調査の結果は動かすことのできない事実だと思わせようとしている。
だが、インチキ療法の研究家であるパレット氏は、ここでも注意を促している。
事実の半分しか記されていないからだ。
リストアップされた研究とまるきり正反対の結果がどれほど多く出ているかに一言も触れられていない。
それに、「数百」件も研究があったとしても、ついてはその内容に関しては何も言っていない。
ビタミンの有益な効果に関する研究が多いことに驚いてはいけない。
ビタミンは薬品企業によって高価な値段で売られている。
当然のことながら、その利益は不利な結果が出るかもしれないような研究にそそぎ込まれることはない。
この点ではビタミンも、そのほかの医薬品と異なるわけではない。
絶対によいイメージであること、それだけが利益をもたらすのである。
たとえば、抗コレステロール剤「リポベイ」という救援団体で働いているGさんは嘆く。
人々は主に加工食品や調理済み食品を食べるしかない。
だが、この種の食品はおいしくないし、健康にもよくない。
そのためウエストエヴァートンの住民の約四〇パーセントが慢性の病気をかぜんそ〈かえているという。
子どもの五人に一人が噛息で、死亡率はリパプールのほかの地区のほぼ倍の高さだ。
ここの住民は、イギリス圏内のどの地域よりも早死にである。
「セーブ・ザ・チルドレンウエストエヴァートンは、貧困と欲求不満の高さでは群を抜いている。
このような地域に住む人々は概してあまり健康ではない。
病気を引き起こす原因が多すぎるのだ。
タバコやアルコールに溺れ、スポーツといえばサッカーのリパプールFCの試合をテレビで観戦するくらい。
ウエストエヴァートンでは欲求不満、絶望、暴力が渦巻いている。
だから人々は病気になったり早死にしたりするのだと昔からいわれてきた。
それに、この地域ではいまだに昔ながらの暖炉に石炭を放り込んでいる。
この暖房はとくに子どもの気管支に負担をかける。
このような劣悪な状況下にある地域にこそ、さまざまな病気から身を守るために、健康によい食品が豊富にそろっていなくてはならないのだが。
栄養不足がますます病気に拍車をかけている。
栄養不足はウエストエヴァートンだけに蔓延しているのではない。
おいしい食べ物があふれでいても、食べなければ栄養不足になる。
十代前半の少女が、Dみたいになりたいと、延々とダイエットを続けたあげくビタミン不足になることもある。
高齢者の場合は、食べる量が少なかったり、老人ホームの食事が栄養が偏っているために起こることもある。
もっとも、栄養不足がどれくらい蔓延しているかはだれにもわからない。
また、自分の仕事に役立てようとして、なんてことを触れ回っている人もいる。
ファルケナウからの声ビタミン不足説を唱えている一人が、カール・ハインツ・ルダート氏だ。
この人は治療師であり著述家でもあり、バイエルン州オルテンブルクで自然療法の講習会を聞いている。
この近辺ではまだ秩序が守られている。
地方政治ではCSUが安定した勢力を保っている。
出生率は、わずかではあるが死亡率を上回っている。
こんな平和な田園風景の中で、先だって『フォルストハウス・ファルケナウ』という映画の撮影が行われた。
主演のCはオルテンブルクのホームベージに、観光客に向けた挨拶の言葉を寄せている。
バイエルン州の田舎にある、そのフォルストハウスから、治療師のルダート氏は、食品に含まれるビタミンの質が低下していると、猛烈な非難の集中攻撃を行っている。
「現在では市場に食品があふれでいるが、それはすなわち食品にビタミンそのほかの栄養素が十分に含まれているという意味ではけっしてない」過剰生産、工場加工、早期の収穫、長時間輸送、これらが食品から活力を奪っている、とL氏は言う。
「バランスのとれた食事をしていても、実際に栄養素が十分に補給できているとは限らない」そのための解決策は一つしかない、「分子矯正医学に基づいた栄養補給」が大切だと言う。
つまり、ビタミン剤やビタミン・サプリメントを飲めということだ。
ルダート氏は、ヴェストファーレン地方からも後方支援を受けている。
一般医学の専門医ミヒャエル・ゲーシェ医師だ。
専門医なので、この人も専門用語に詳しい。
ビタミンとは、微量で代謝の調節を行う栄養素である、という調子で語る。
A医師は数字を巧みに操るすべも心得ている。
専門誌『自然療法リポート』に、次のように書いている。
「約四〇〇〇万年の進化の過程においても、細胞が必要とするこの生命に不可欠な物質には何の変化も起こらなかった」ビタミンの所要量が四〇〇〇万年前から変化していないことなど、どうして彼にわかるのだろうか。
しかも、「健康によい食事が微量栄養素の需要を満たしているという理論は誤りだ」とまで言いきる。
そのように主張する人は「科学的誤謬のほかに、国民に対する道義的責任も欠けている」とも呈一日J〇ところでV医師は、何が科学的に正しく、何に道義的責任があるかを、十分に心得ている。
「分子矯正医学に基づいた栄養補給」とはどんなものかについて、彼はまずマルチビタミン剤をあげ、これこそが「全体医学の考え方」なのだという。
だがこういったビタミン製剤が、遺伝子組み換え菌や石油から作られていることを知っている人なら、これを「全体医学」の一部と解釈することなど絶対にないだろう。
そして、健康によいとされる食事には「微量栄養素」が不足しているので、実際は健康によくないのだと主張していこの理論は科学的に明確さを欠いている。
このような主張には信頼できる根拠がないので作家でジャーナリストのYさんも、ビタミン不足説を支持している。
書物や雑誌記事を書く以外に、健康関連のセミナーも行っている。
テーマは「レイキ」、「五人のチベット人」、「ブルーグリーンアルジエの治癒力」など。
Jさんが繰り返し説くのが「現代の食品にはビタミンが不足していること」で、これが子どもだけでなく、国民全体の健康を害しているのだという。
レイキ療法と「チベット人」の専門家であるJさんは、ハイデルベルクがん予防学会の研究を盾にとって非難する。
それによると、一九八五年から一九九六年までの聞に、食品に含まれるビタミンとミネラルが「著しく減少」したという。
その研究から一例を示すと、「わずか二年の間にリンゴに含まれるビタミンCの量は五分の一に減ってしまった」ひどい状態のように聞こえる。
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